子どもと一緒に本を楽しむ秘訣を親しみやすく伝える、読書教育指南書&ブックガイド『子どもを本好きにする10の秘訣』

2017年10月20日


またまたご無沙汰しておりました。スタッフ押川であります。

「もう小学生になったんだから、絵本は卒業ね」「読み終わったの?じゃあ、どんな話で、どう思ったのかを説明してみて」「途中でやめるの?一度読み始めたんだから、最後まで読みなさい」「またそれ読んでるの?いい加減、ほかのを読んだら」・・・
本好きな子どもになって欲しいがために、ついつい口にしてしまう上のようなことば。実はこれらのなにげないひと言こそ、子どもをかえって本嫌いにさせてしまう「NGワード」なのだということを指摘するのが、今回ご紹介する『子どもを本好きにする10の秘訣』(高濱正伸・平沼純著、実務教育出版、本体1400円)です。

本書は、本好きな子どもに育ってもらうために必要な考え方や役立ちそうなノウハウを、親しみやすい語り口で伝えてくれます。子どもがいない・・・どころか結婚する見込みすらない(苦笑)わたしですが、読んでいて大いに共感したり、参考になるところの多い一冊でした。

冒頭に挙げたようなことばが、子どもを本嫌いにさせてしまう原因について、著者は「本というものをあまりにも短絡的に、何らかの学習の手段=『教具』として考えすぎてしまっているからだ」と指摘します。
そして、重い障がいを持って生まれながらも、たくさんの絵本を両親から与えられ、それらを楽しんだことで高い言語能力を伸ばすことができたニュージーランドの少女、クシュラの例を引きながら「あくまで『楽しさ』を根底に据えてこそ、結果的に学びとなるものが多くなる」と説き、読書を何かの「手段」ではなく、それ自体を「目的」として、子どもと一緒になってひたすら楽しむことに徹することを提案します。この姿勢に、まず強く共感いたしました。

子どものための本選びについても、実に有益なアドバイスを与えてくれます。
たとえば「おやつの本」と「ご飯の本」の話。「おやつの本」とは、「見た感じはなんとも人目を引くような作り」で「中身はたしかにさまざまな事件や出来事が起きて勢いよく読める」けれども「一生ものの栄養になるようなものは得られない」本のこと。それに対して「ご飯の本」は、「子どものためにとことん考え抜かれた作りになっていて、物語世界にどっぷりと浸ることができ、一生の栄養になるような骨太な力を得られる本」であると定義します。
その上で、「ときには『おやつの本』があってもいいと思います。しかし、大切なのはバランス」だとして、時代を越えて読みつがれてきた、歯ごたえのあるロングセラーである「ご飯の本」の楽しさを子どもたちに知ってもらいたい、と熱っぽく語ります。

また、大人目線での「泣ける話」を子どもに押しつけないで、という主張にも共感いたしました。大人の側が「子どもに大切なことを教えるために本を読ませよう」と意気ごむことで、本を読むことが途端に「道徳的義務」と化してしまい、その結果子どもは本からますます遠ざかっていく、と著者はいい、「子どもたちに必要なのは『感傷』ではなくて『感受性』」だと力説します。

最後の章では、読書によって身につく「9つの力」について詳しく述べられています。インターネット検索では得られない時空を越えた「知恵」や、見えないものをイメージする「想像力」、自分とは違う多様な価値観への気づき・・・。とりわけ、「一冊の本をとおして、直接的にも間接的にもさまざまな『つながり』が生まれる」という話には、しみじみと希望が湧いてくるのを感じました。
そういった、読書によって得られるものの大切さを説く一方で、著者はあえて「本とは決して『読まなければならない』ものではない」とも主張します。「『読書のための読書』になるのは避けるべきであり、『いい本を読む』よりも『いい人間になる』ことのほうがはるかに大切なのは、言うまでもありません」と、読書が必ずしも万能ではないということを述べるところにも、著者の読書に対する確かな哲学が感じられました。

そして本書の目玉ともいえそうなのが、著者が「自信をもっておすすめできる」という291冊の絵本、児童書を8つの分野に分け(一部を除いて)表紙の写真や簡単な概要とともに紹介したブックリストです。
日本と世界の昔話や神話、『ピーターラビットのおはなし』『はてしない物語』『あしながおじさん』『西の魔女が死んだ』といったド定番作品から、知る人ぞ知る名著まで。いずれの作品も、子どもはもちろん大人も楽しめそうなラインナップとなっていて、本選びの参考になりそうです。

読書教育の指針としてだけでなく、本と読書に対するしっかりした考え方に裏打ちされた読書論やブックガイドとしても読むことができる本書。子どものいる親御さんはもちろん、子どものいない方にもオススメしておきたい一冊であります。

余談ながら、本書の存在をわたしに教えてくれたのは、当店の同僚女子であります。本書を教えてくれたことに感謝するとともに、このような良書の存在を見出したことに深く敬意を覚えるのであります。

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